2022年11月1日
上質で、扱いやすく、サステナブル。カノーの「塗り物」から広がる物語
和を感じる色合いのお弁当箱や、アウトドアにぴったりな木目調のワンプレートなど、おしゃれ心をくすぐるテーブルウェアを多数展開するカノー株式会社。扱いやすい樹脂製の商品は漆器の代用品ではなく、独自の魅力を持った「塗り物」だといいます。電子レンジ、食洗機対応という機能性の先を見据えた同社のものづくりについて、詳しく伺いました。
和の色彩、やさしい木の風合い……忙しい毎日にホッとする瞬間を
カノーの多彩なブランドの中で、ズバリ注目の商品ラインを教えてください。
イチオシは、木の風合いを感じるナチュラルテイストの商品ラインです。代表的なのが、日本古来の色彩とダークブラウンの木目調のバイカラーデザインが特徴的な「にっぽん伝統色」シリーズ。伝統色は漆黒や古代朱といった漆器らしい色から、桃花色や柿色、山吹色などの華やかな色、汁椀としては珍しい柿色、藍白、藤色など10色をご用意しています。ご家族でそれぞれお好きな色を選んでいただいたり、色違いのお皿を料理に合わせて使い分けていただいたりと、暮らしの中で豊かな彩りを楽しんでいただける商品です。また、同じコンセプトの白木調のライン「やさしい彩り」も展開しています。単に木目部分を変えただけでなく、扱う伝統色も白木調に合うよう、あかね色、きなり色、るり色など、まったく異なる7色にアレンジしています。
よりシンプルなものでは、木目調がメインの「Woody」や「EARTH COLOR」も人気です。特に「EARTH COLOR」は、文字どおり自然や大地を想像させる色彩を取り入れているのがポイントで、アウトドアにもうってつけです。
いずれも電子レンジ、食洗機対応で、お気軽に普段使いしていただけるものになっています。
お弁当箱やプレート、カップなど、各ブランドでいろいろな商品が展開されていますが、売れ筋はありますか?
ランチプレートが好評ですね。カフェランチのようなおしゃれさを演出できますし、機能性の面でも、毎食の献立をプレート1枚に収められるので食器洗いの時短に。仕事や家事、育児などに日々忙しい女性が、食卓でホッと一息つけるような商品になっています。
いずれの商品もリーズナブルで扱いやすく、とてもかわいらしいデザインで、いわゆる伝統的な漆器と比べると手に取りやすそうだなと感じます。
純粋に「漆器を買う」というより、雑貨感覚で気軽にお求めいただける商品になっていると思います。実際に当社商品の多くは雑貨店で購入いただいていますし、今後は雑貨を扱うアパレル店での取り扱いも増やしていく予定です。普段あえてテーブルウェアを買いに行かないような方にも、当社商品を手に取っていただきたいと思っています。
漆器にはない魅力を追求 独自の塗装技術の開発も
商品づくりのこだわりについてお聞かせください。
特に重視しているのは「塗り」です。産地では、塗り以降の工程における技術は各工程の職人さんが独自で開発するのが一般的で、私たちのようなメーカーは商品企画や販売に注力し、製造工程に取り組むとしても金型開発の領域にとどまるのが基本です。しかし当社では、塗りの技術やノウハウを職人さんとのコラボレーションで造り上げ、ユニークな商品の開発につなげています。例えば「にっぽん伝統色」の塗り分け塗装技術も、その多くは自社で開発しました。従来、職人さんが一つ一つ轆轤(ろくろ)を使って手描きすることで表現していた手仕事を塗装で実現したのは、産地では当社が最初だと思います。
色の付いた樹脂をそのまま使うのではなく、ウレタン塗装で仕上げているところがポイントなのですね。
はい。当社商品を始め、山中で「近代漆器」と呼ばれている樹脂製の商品が扱いやすさと上質感を兼ね備えているのは、この塗りがカギになっています。
当社商品の大部分は木製ではなく樹脂製品ですし、漆塗りではなくウレタン塗装です。伝統的な木製漆器とは違うものづくりの方向性により、伝統漆器とは異なる魅力を持つ「塗り物」を作っていきたい──そう考えています。
商品企画の発想も気になります。今っぽい感覚にマッチした多様な商品バリエーションはどのように生まれているのでしょうか。
個々の商品を企画するというより、ブランドごとにしっかり世界観を作り上げることを意識しています。あるいは、商品を使っていただくシーンを詳細かつ具体的に思い描くようにしている、とも言い換えられるでしょう。どの世代の方が何人家族で、どのようなシーンで使うものなのか、そのためにはどのようなコンセプトが響くのか、といった発想を広げながらブランドを設計しています。
展示会などで商品を販売する際にも、ブランドの世界観が伝わるよう、ディスプレイに工夫を凝らしています。例えば「EARTH COLOR」シリーズの商品は、キャンプなどアウトドアで使うシーンをイメージできるようにディスプレイして販売しました。それぞれのブランドで商品バリエーション、カラーバリエーションを増やしているのも、こうした世界観を実際の売場で演出しやすくするためです。当社商品を取り扱っていただくお店の方が売り場づくりの参考にしていただけるような「魅せ方」を考えるのも、ブランド設計においては欠かせないと考えています。
機能性やデザインを超えた“人となり”を感じるものづくり
こうしたものづくりの根底にある「カノーらしさ」とは何でしょうか。
一言でいえば「ひとつの商品から物語が広がるようなものづくり」だと考えます。先ほど、ブランドを企画する際には商品を使っていただくお客さまの姿や、具体的なシーンまで思い描いているとお話しました。さらにそれだけにとどまらず、私たちはその「物語」の登場人物となるすべての方が、当社商品を通じて笑顔になっていただけることを第一に考えているんです。こうした理念が、カノーの商品企画、製作の根幹にあると考えています。
人の温かみを感じるような企業理念ですね。
当社はいわば「法人」ですが、そうした法人としての「人格」「人となり」の発信が大切になってきていると考えます。お客さまにとって、今や商品選びの基準はデザインや機能・特性だけでなく、その商品を提供している企業の背景も重要な要素のひとつです。「にっぽん伝統色」「EARTH COLOR」といったブランドの商品を購入いただいたお客さまに「これらの塗り物を作っているカノーとはどのような会社なのか」「どのような理念に基づいてものづくりに取り組み、どのように社会と関わっているのか」といったメッセージを自信を持って伝えることが、お客さまとの信頼関係を築くことにつながると考えています。
インスタグラムなどのSNSも、そうしたカノーの人となりが伝わる場になっているように思います。
はい。特にインスタグラムでは、当社社員が普段の食事を商品に盛り付けた写真を投稿するなど、私たちの等身大の姿を発信しているところです。気軽なコミュニケーションの中でカノーをもっと身近に感じていただき、「塗り物」から広がる物語を体感いただければなと思います。
「山中塗といえばSDGs」新たな付加価値の確立を目指して
今後の展望を教えてください。
産地を挙げて、山中塗ブランドを次のステップへと進化させていきたいと考えています。山中が先駆けとなった電子レンジ、食洗機対応の塗り物は、もはやどこの産地でも当たり前。さらなるプラスαの価値創出が求められています。
その可能性のひとつとして私たちが注目しているのが、SDGsです。現在、当社ではプラスチック使用量を削減し、環境負荷を低減する新たなバイオマス素材の商品を開発しています。現状では、山中塗でバイオマス素材を使用しているものは配合率が10%程度にとどまっていますが、それをはるかに超えた配合率での製品開発にチャレンジしているところです。価格や技術面の課題をクリアできれば、技術を自社にとどめることなく、ゆくゆくは産地へ展開したいと考えています。新たな時代に向け、若い世代の方々からも「山中塗といえばSDGs」といってもらえるよう、一メーカーとして尽力したいと思っています。
最後に「デジタル展示場」を訪問された方にメッセージをお願いします。
私たちが描く「商品から生まれる物語」は、さまざまな出会いの物語です。商品を購入いただいたお客さまとカノーとの出会い、カノーの商品を通じたお客さまと小売店さまの出会い、お客さまと大切な方々の出会い、その大切な方々とカノーの新たな出会い──そうした出会いを彩る商品を多数販売していますので、ぜひ幅広く見ていただき、琴線に触れる一品を見つけていただけると幸いです。
カノー株式会社
一つの商品から生まれる様々な人との出会いを私たちは大切にしています。 「カノー株式会社」の商品を使っていただくお客様との信頼関係はもちろんのこと、 一つの器をめぐって拡がるお客様一人一人の物語を私たちは思い描きます。 「大切な家族の方と囲む暖かな食卓で・・・?」 「お世話になった方への贈り物でしょうか・・・?」 「大好きなあの人へ私の想いを伝えたいから・・・・?」 笑顔で喜んでいただいているお客様の顔を思い描きながら、 日々新しい商品をみなさまにお届けしています。
石川県加賀市黒瀬町350-1