2022年10月3日

初めての漆器は毎日使ってほしい石川漆宝堂がいざなう滋味深き漆の世界

素朴な風合いの椀や平皿など、日々の食事に気軽に使えるうつわを製作・販売する有限会社石川漆宝堂。ほぼすべての塗り工程を自社工房で行うなど、漆へのこだわりは山中でも随一です。「毎日、長く使い続けてこそ味わいが深まる」という漆器の魅力や、うつわ作りへの想いを聞きました。

和食も洋食も シンプルで丈夫な万能のうつわ

ズバリ、石川漆宝堂の人気商品を教えてください。

ロングセラーは、毎日の食事に幅広くお使いいただける「挽目うつわ」シリーズです。高台がないのが最大の特徴で、そのため汁椀以外の用途にも使えます。オススメは、同シリーズの大中小3つのうつわと蓋(平皿)1枚の、4点セットで使っていただくこと。例えば、小サイズに汁物、中サイズにご飯、大サイズに煮物やサラダ、平皿に焼き魚……といったように、どのような献立も盛り付けられるようになります。さらに収納時は3つのうつわを入れ子状に重ね、平皿を蓋にしてスッキリと収納できます。
もうひとつの定番商品となっているのが、独特の凹凸「ハツリ目」を表面に施した「弥生」シリーズです。キズがついても目立ちにくく、また普段使いしやすい素朴なデザインになっています。この「ハツリ目」は特殊なカンナで木地に直接施しているもので、現在、山中でこの技術を持つ木地職人はたったひとりしかいません。

「用途にしばられず使える」「キズがついてもわかりにくい」など、漆器初心者にも扱いやすそうなうつわだと思いました。

まさに、初めて漆器を購入する方の最初の一品にピッタリのうつわだと自負しています。価格もお手に取っていただきやすいよう「挽目うつわ」シリーズは4点セットで2万円、「弥生」シリーズは6,500円〜と抑えめに(以上、税別)。それでも一般的な食器に比べるとお値段はしますので、その分汎用性の高い、いわば“コスパの高い”漆器にしているんです。いろいろなシーンで試しながら「こんな料理にも使えるんだ!」と新たな発見も楽しめるのが、当社の漆器だと思います。例えば、シチューやサラダといった洋食にも合うんですよ。

意外ですね! 洋食にも使えるとなると一気にハードルが下がります。

実際に洋食に使っていただきやすいようなコンセプトで企画、製作した漆器商品もあります。代表的なのが、トースト1枚がちょうど収まるサイズの平皿「パン皿」。色も一般的な朱塗、黒塗、溜塗だけでなく、青塗(緑色)や白塗(ベージュ)などかわいらしいカラーをそろえました。
さらに、株式会社メソッドのデザイナーとのコラボレーションで製作した新商品「漆オーバルプレート」など、よりモダンなデザインの商品も展開しています。カレーやパスタも漆器で楽しむ──そんなライフスタイルのアイデアも提案するような商品です。

デザインから機能性に至るまで、普段使いできる漆器を追求しているのですね。

使えば使うほど味わいが深まるのが、漆器の醍醐味です。艶が増していきますし、表情も少しずつ変わるんです。例えば「挽目うつわ」シリーズでは「根来(ねごろ)塗」という技法を採用しており、うつわを長く使い続けていると、朱塗りの下から徐々に黒漆が表れてきて、漆器の風合いが変化していきます。そうして“自分だけのうつわ”へと育った漆器への愛着はひとしお。一度体験をした方なら、きっと「次の漆器が欲しい」と思っていただけるはずです。
そんな魅力的な漆器の世界の入り口になるようなうつわ作り、毎日、何年も使い続けられるうつわ作りを、石川漆宝堂では大切にしています。

創業者独自の製作スタイルを受け継ぐ自社工房

石川漆宝堂のほとんどの商品は、自社工房で塗りを施されていると聞きました。

はい。当社代表を含む3名の職人が、下地から上塗りまで、ほぼすべての塗りを行っています。実はこうしたケースは山中では極めて稀なんです。一般的に「商人」と呼ばれるメーカーは商品の企画、販売を行い、製造工程は産地の職人が担います。そして、各工程は木地職人、下地職人、中塗り職人、研ぎ職人、上塗り職人といった職人たちによって、細かく分業されているのが山中という産地の特徴です。したがって、メーカーが職人を兼ね、さらに自社の工房で下地から上塗りまで一貫して行っている当社のようなケースは、とても珍しいと思います。

こうした独自のスタイルはどのような経緯で生まれたのでしょうか。

初代 石川省三が戦後間もない創業当初、たったひとりで下地から中塗り、上塗りまで自ら手掛けた商品を全国へ販売していたのがルーツにあります。やがて、その高い技術に惹かれた山中の若い職人たちが弟子入りする形で工房に加わり、石川漆宝堂の基礎ができあがっていきました。
現在では全盛期に比べると職人の数は減ってしまいましたが、当社の工房で腕を磨いて独立していった多くの職人たちは、今も山中の漆塗りを担う人材として活躍しています。

自社ですべての塗りを行う強みは何だと思いますか。

クオリティに自信を持って商品を提供できることに尽きると考えます。品質管理がしやすく、各工程で柔軟に調整を加えられますし、何よりメーカーとしてのこだわりを直接商品作りに反映できるのは大きいですね。中でも下地は、代用下地などを使わず総漆塗りを徹底。下地がしっかりしていれば剥がれや気泡が生じにくくなり、長く安心して使っていただけると考えています。

直販オンラインショップやSNSで作り手がもっと身近に

2021年以降は直販オンラインショップでも石川漆宝堂の商品を購入できるようになっていますね。

オンラインショップはコロナ禍でオンライン展示会に出展したのがきっかけでオープンし、現在ではリピーターの方もいらっしゃいます。小売店さんや問屋さんを介さない分、作り手の想いをお客さまに直に伝えられますし、実際に商品を購入してくださったお客さまが、そうした私たちの想いを確かに受け取ってくださっている手ごたえを感じますね。

オンラインショップならではの売れ筋商品はありますか。

先ほどご紹介したロングセラー商品のほか、カレースプーンやレンゲなどのカトラリーも人気があります。お客さまにとってみれば、実物を手にとって見られないオンラインショップでも気楽に購入できるのかもしれませんね。
またアウトレット商品を販売できるのも直販ショップならではだと思います。販売の対象となるのは、例えば「キズはないけれど、朱塗のうつわにほんの少し黒い漆がついてしまった」といった商品で、いずれも使用にはまったく問題ありません。よりお求めやすい価格でご提供しているため、販売時には毎回あっという間に売り切れてしまいます。
「どのような商品が注目されているのか/売れるのか」といったお客さまのリアルな反応を、今後の商品作りに活かしていきたいと思っています。

お客さんと直接つながれる場として、インスタグラムなどのSNSアカウントも活用されていますね。

インスタグラムでは、暮らしに漆器を取り入れるヒントになるような写真を中心に投稿しているところです。手作りの昼食を漆器の丼に盛り付けてみたり、テイクアウトしたスイーツを長角の卓上膳にのせてみたり──“インスタ映え”な投稿にはコメントもいただいています。
よりお客さまとのつながりを感じられるのはインスタライブですね。過去には、自社工房での塗りの作業をノーカットで配信しました。一般の方はまず見られない光景で、漆器が一つひとつ丁寧に作られている様子を垣間見ていただけたのではないかなと思います。また、取引先のうつわ店さんと行ったトークライブも、たくさんのコメントで大いに盛り上がりました。
作り手の顔が見えると漆器がより身近になると思いますので、今後も積極的に発信をしていきたいと考えています。

「私も作ってみたい」と若い世代が感じる漆器作りを

石川漆宝堂が今後目指していきたいことはありますか。

山中塗という伝統工芸を次の世代につなげられるような商品作りを志していきたいと考えています。伝統工芸の世界は奥深く、一度その面白さがわかれば、若い人こそどんどんハマっていけると思うんです。しかし、現時点では、まだそれほどの魅力を産地として確立できているとはいえませんし、魅力の発信も十分ではありません。こうした課題に対して私たちができるのは、まずは若い世代の方の手に取ってもらえるような商品を作ること、そして少しでも多くの方に漆器商品と「山中塗」というブランドをPRすることです。そうした地道な取り組みの先に「漆器って素敵だな。自分も作ってみたいな」と思ってもらえる未来があると考えています。

最後に、デジタル展示場をご覧の皆さまに、メッセージをいただけますか。

長い時間をかけ、人の手で一つひとつ作られた漆器は、どれひとつとして同じものはありません。そうした漆器を長きにわたって大切に使い続けていただけるよう、私たちも丈夫で使いやすい商品を提供していきたいと思っています。ぜひいろいろな商品をご覧になって、お気に入りの一品を見つけていただけると幸いです。

有限会社 石川漆宝堂

創業 昭和22年より70有余年 初代 石川省三の塗の技を今に受け継ぐ職人達の手によって伝統工芸山中漆器を作り続けてまいりました これからも日々精進を重ね誰からも愛される漆のうつわを提供していきますのでご期待ください

オーダーメイド可

職人手作り

電話対応可

〒 922-0106
石川県加賀市山中温泉上原町ワ529番地1

0761-78-0408

ishikawa@sand.ocn.ne.jp

https://www.sippohdo.jp/

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