2021年11月1日

心と心がつながる、愛着を持って使える 「HAKOYA」の弁当箱

カラフルで親しみやすいものから、和の雰囲気を生かしたモデルまで、さまざまなスタイルの弁当箱を製造・販売している株式会社たつみや。30年以上の歴史を持つ「HAKOYA」ブランドで、弁当箱のほか、重箱やカトラリー、テーブルウェアなども展開しています。今回は、「お弁当は、気持ちのやりとり。」をコンセプトに掲げる同社にインタビュー。その多彩なラインナップや、今後の展開などについても伺いました。

創業のきっかけになった弁当箱で、新たな市場を開拓

たつみやさんは、山中漆器の蒔絵の祖と伝わる会津屋由蔵とゆかりがあるのですか?

はい。会津屋由蔵(あいづや・よしぞう)は、江戸時代に活躍した蒔絵師です。その名のとおり、現在の福島県会津地方の出身で、伊勢参詣の帰りの道中で山中に立ち寄りました。地元の職人衆は、その蒔絵技術を伝授してほしいと猛アピールし、ついに由蔵はここで所帯を持ち、定住することになりました。以後、蒔絵の技術を広めながら、山中漆器の発展に尽力。当社を創業した巽谷武雄は由蔵の傍系にあたります。

東京で生まれ育った武雄は、将校として日中戦争に従軍。戦闘で片足をなくし、親族のいる山中に妻と移住しました。太平洋戦争末期の1945(昭和20)年に、金属供出による代替品として木製の弁当箱を製造する話が持ち込まれ、漆器業を創業。しかしその後すぐに終戦となり、弁当箱を製造することはありませんでした。

戦中・戦後の大変な時期に創業されたのですね。

武雄たちにとっては、新しい土地で未経験の仕事に挑戦する困難さはありましたが、木製の茶托や菓子鉢などを製造しながら事業を拡大していきました。昭和30年代になると、山中の他の企業とともにプラスチック製の近代漆器に参入。時計や電話台なども手掛け、結婚式の引き出物を中心としたギフト市場に多数の商品を供給しました。

転機となったのは、バブル経済が終焉を迎えた1990(平成2)年ごろでした。ギフト市場はなお活況でしたが、価格競争が激化して利益が圧迫されていました。他の市場を模索していた当社が注目したのが、創業のきっかけにもなった弁当箱だったのです。

「HAKOYA」シリーズはどのように生まれたのですか?

当社の「HAKOYA」シリーズはもともと、当時お付き合いしていたデザイン会社が展開していたブランドでした。この会社が事業継続を断念したため、私達がブランドを引き継ぎ、在籍していたデザイナーさんたちとともに新しい弁当箱を製造することにしました。

当時の弁当箱は、まだまだアルミ製の「どか弁」のようなものが主流でした。そこで当社は、カラフルでデザイン性の高い商品を投入し、箸箱や巾着袋などもトータルで展開。目新しさが評価されたのはもちろん、経済不況による消費者の節約志向にもマッチし、徐々にブランドを認知していただけるようになりました。

海外からも評価される「HAKOYA」の多彩なラインナップ

「HAKOYA」を受け継いだ当初から毎年発行しているカタログは、眺めているだけで楽しくなりますね。

おかげさまで、2021年に30冊目を迎えました。カラフルな商品はもちろんですが、とりわけ和の雰囲気を大切にした商品に高い評価を得ています。業界でも、「和のたつみや」と呼んでいただいています。

ロングセラーとなっているのは「わっぱ弁当」シリーズ。スギやヒノキでつくられる伝統工芸・曲げわっぱの質感を近代漆器で再現しながら、機能的に仕上げた弁当箱です。シックな白い角三段重が特に好評な「重箱」シリーズも人気。どこでも、なんにでも使える、使いやすい器です。

たつみやさんの、和のテイストを生かした弁当箱は、海外でも人気があるそうですね。

2000年代に、組合の事業として海外展開に挑戦したのがきっかけになりました。出品した商品がフランスの展示会を中心にヒットしたんです。フランスには、日本のアニメのファンが多く、彼らの間で「キャラ弁」ブームが巻き起こりました。

当社の商品では、枯山水式庭園をイメージした「samon」シリーズが人気です。モダンな雰囲気のラウンド型の器には内塗りを施し、おかずを見た目にも美味しくしてくれます。キャラクターをあしらった「こけし弁当」も反響がありましたね。2段の器と汁椀がセットになっていて、招き猫や武将、クマやトラなど、愛らしいデザインが特徴です。

デザインだけでなく、機能性も兼ね備えている点は、たつみやさんの強みですね。

当社の弁当箱は、つねに新しい素材に注目して進化してきました。先代は、電子レンジや食洗機に対応するため、耐熱性・耐久性の強いPET樹脂製品をいち早く商品化。近年では、ヒノキバイオマスプラスチックを採用した「ひのきのぷら」をリリースしました。ヒノキの木粉を再利用してプラスチックと融合させた新素材で、ヒノキ由来の天然の抗菌効果が期待できるうえ、プラスチック使用量を抑えた環境配慮型の商品です。

近年、SDGs(持続可能な開発目標)というキーワードも注目されています。

そうですね。当社の商品は、持続可能な社会づくりに貢献できると考えています。安価な弁当箱は100円ショップでも売っていますが、繰り返しの使用には適していません。当社は、温かみのある、なるべく長く使っていただける商品を世に送り出したいのです。

2022年には、コンビニなどでのプラスチック製フォーク・スプーンが有料化されます。「マイ箸」のみならず、「マイスプーン・フォーク」が一般化するかもしれません。これを受けて当社では、「大人のカトラリー」シリーズをリリースしました。若狭の塗箸と燕三条のスプーン・フォークを、山中塗のケースに収め、産地間コラボレーションをした商品です。

温もりあふれる弁当箱で、人と人とのつながりを広げたい

企業コンセプトとして「お弁当は、気持ちのやりとり。」を挙げられていますね。

弁当箱って、日本では当たり前に定着しているものですよね。ただ単に食べ物を持ち歩く容器ということだけではなくて、コミュニケーションを生むツールだと思うんです。お母さんが朝早く起きてつくってくれたお弁当を、「残さず食べたよ」と言って持って帰る。職場や学校で仲間と弁当を広げて、おかずを交換しながら語らう。日本人なら誰しも語れる思い出の1ページを、弁当箱がつくってきました。

企業コンセプトには、そんな人と人とのつながりを、もっと広げていきたいという願いを込めています。お弁当の文化が、日本のみならず世界に広がっていったらいいですね。

山中の産地における「技術の継承」も重要視されているのだとか。

先代から引き継いできた思いは、「山中だからこそつくれる商品づくり」です。この産地でもかつて、海外製の木製漆器が多く流通しましたが、やはり地元でつくった商品をきちんと残していくことも大切です。多くの職人さんたちの思いが詰まった温もりある漆器こそ、お客さまに長く使っていただけるのだと思います。

そのためには、技術を後世に残していくことが重要です。山中の漆器は大量生産ではなく「多品種少量」が強み。人で補えない部分は産業用ロボットなど先端技術を駆使してもいいかもしれません。消費者のニーズにかなう器を提供できるように、力を尽くしていきます。

最後に、デジタル展示会を訪問された皆さんにメッセージをお願いします。

当社が製造しているのは、消費者の暮らしに密着した漆器です。良質な素材を用い、機能性を兼ね備えた商品を、時代背景やライフスタイルに合わせて提案していますので、ぜひ手に取ってみてください。当社はこれからも、新しいエッセンスを加えた、お客さまに喜んでいただけるものづくりに邁進していきます。

株式会社たつみや

株式会社たつみやは山中漆器の塗りのお弁当箱ブランド「HAKOYA」を展開しています。 山中漆器の成型や職人の技術を活かしたデザインや、電子レンジや食器洗い機対応など機能を進化させてきました。 使い勝手や親しみのある商品を意識したものづくりを行っています。

オーダーメイド可

大量ロット対応

職人手作り

電話対応可

〒 922-0274
石川県加賀市別所町漆器団地12番地4

0761-77-1717

sales@hakoya.co.jp

https://hakoya.co.jp

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