2021年11月1日

いつもsomething new! 独創的で色彩豊かな「夢工房なかで」の漆器

漆塗りにこだわった、色とりどりの漆器を展開する「夢工房なかで」。「いつもsomething new!」をモットーに、山中の産地で培われた伝統の技術を生かしつつ、新しい視点を取り入れた独創的な漆器は、ずっと使いたくなる逸品です。今回は、戦前から連なる同社の歴史や、商品力の底流にある「楽しめるモノ創り」という考え方などについてインタビュー。オリジナリティあふれる商品ラインナップや、今後の展望も紹介します。

伝統の木製漆器も、便利な近代漆器も 「イイものはイイ」

夢工房なかでさんは、戦前からの長い歴史があるそうですね。

初代の中出勇次は、1935(昭和10)年に、塗師として山中温泉で開業しました。戦後の1948(昭和23)年、漆器の製造・卸を行う「中出勇次漆器店」を設立。当時は、割烹で使うすし桶などを塗っていたそうです。1966(昭和41)年には別所町の漆器団地に移転し、問屋としての業務を拡大。ギフト市場の需要にも対応しながら、従来の木製漆器のほか、近代漆器の扱いも増やしていきました。

1982(昭和57)年、「有限会社 中出漆器店」を設立。その後、デザイナーさんたちとも交流を図り、それにインスパイアされ、カラーリングの木製漆器の開発に取りかかりました。現在までに「独楽文様(こまもんよう)」「漆切子(うるしきりこ)」などの商品が生まれています。2006年からは「夢工房なかで」という屋号も使用し、「いつもsomething new!」をモットーに、使って楽しい、心が豊かになるような漆器を作っています。

伝統的な木製漆器から近代漆器まで、幅広く取り扱われていますね。

当社は、あらゆる漆器に対して「イイものはイイ」という捉え方をしています。たとえば近代漆器は、リーズナブルで、カジュアルに漆器を楽しんでいただけるメリットがあります。現在では、食洗機や電子レンジに対応した製品もあり、普段遣いにはぴったりです。

木製漆器は比較的高価ですが、修理も可能で末永く使っていただけます。そして、樹脂にはない、木ならではの質感や温かみがあります。また、漆塗りの器は、年月が経つと色合いが変化していきますが、その味わいを楽しめるという面もあります。

現代表の中出克人が入社した昭和50年代を振り返ってみますと、近代漆器に非常に勢いがあり、各地の問屋や小売店から当社にも多くの発注をいただいていました。一方で、代表が入社前に修業していた都内の問屋さんからは、「これからは、付加価値の高い木製漆器にシフトしていったほうがいい」というアドバイスも受けていました。それ以後当社は、近代漆器と木製漆器、双方の良さを生かしていくことを選び、さまざまな商品をラインナップしてまいりました。

伝統の技と独創的なアイデアが融合した「楽しめるモノ創り」

「イイものはイイ」という視点があるからこそ、独創的なものづくりができるんですね。

当社では「楽しめるモノ創り」を大切にしています。ものづくりには、作り手が楽しいと感じる部分がなくてはなりません。私たち自らが「使ってみたい」と思える、遊び心を感じさせる面白くて魅力的な商品を生み出していければと思っています。また、「コアな趣味人」を対象とした、遊び心のある漆器も提供してきたいですね。

ただ、主役はあくまでもお客さまです。私たち漆器屋はあくまで脇役。映画やドラマでもそうですが、脇役がいないと主役が立たないですよね。ものづくりを楽しみつつ、「黒子に徹する」という面も大事だと考えています。

夢工房なかでさんの商品は、伝統の漆器とはひと味違う、色とりどりの漆塗りの器が特徴的です。

伝統的な漆塗りは、「赤・黒・茶」が中心でした。私たちは、それに縛られない色彩を表現しようと、独自の商品を開発してきました。

「独楽文様」シリーズは、江戸時代から縁起物として親しまれてきた独楽のカラフルな色彩を、漆器で再現した商品です。蒔絵師が“ろくろ”を回しながら1 本ずつ筆を入れ、当時の江戸の「洒落」そして「粋」の心を、現代風に表現しました。

こちらも江戸時代から続く伝統ガラス工芸・江戸切子をモチーフにしたのが、「漆切子」シリーズです。木目を活かした色彩、そして亀甲彫りという職人の技が息づく、漆塗りならではの温もりが特徴です。

「嵯美(さび)」シリーズは、砥粉(とのこ)に生漆(きうるし)を混ぜ合わせた「錆漆(さびうるし)」に着目した商品。下地として利用される、裏方のような存在の錆漆ですが、あえて上塗りにして、その荒々しさを生かした風合いに仕上げています。

伝統技術を生かしながら、さまざまな切り口で独創的な漆器を作っているんですね。

こうした商品を世に送り出すためには、確かな技術を持った職人さんの存在が一番大切です。加えて、これまで蓄積してきたノウハウ、そして新しい視点を与えてくれるちょっとした「きっかけ」も大事です。今回のデジタル展示会もそうですが、人との出会いや繋がりつながりといったものは、独創的な商品づくりに欠かせないと思います。

時代が移り変わっても、新しい発想の漆器を創りつづける

今後は、どんな漆器づくりにチャレンジしていきたいとお考えですか?

ひとつは、カトラリーですね。木製漆器は、口に触れると心地よく、やわらかい感触があります。これを生かして、デザイン性が高く、価格も抑えられたスプーンやフォークを作りたいと思っています。

もうひとつは、縁起物です。コロナ禍で「アマビエ」が注目されていますが、人生の節目や記念日を祝う、縁起担ぎになるような漆器を作れたらと考えています。

どちらも実現が楽しみです。山中の産地が今後も発展していくためには、どんなことが必要でしょうか。

先ほど「職人さんは大切」と言いましたが、職人の高齢化が進行し、担い手が年々減少しているのが現実です。ものづくりを続けるには、とても厳しい時代と言えます。

かつてのように、この産地で安価なものを大量に作ることは難しくなっています。志を持った若手の職人たちがきちんと生活できるように、方向性をきちんと定め、これまで以上に付加価値の高い漆器を作っていくことが大切だと思います。

最後に、このデジタル展示会を訪問された皆さんにメッセージをお願いします。

当社は、木製の伝統漆器から新感覚の近代漆器まで、素材にこだわらず多様な漆器をご提供しています。目指しているのは、いつでも新しさを感じられる、ライフスタイルにマッチした漆器。感性豊かな若手職人さんとタッグを組んだ商品や、趣味として良質な漆器をお求めの方に向けた商品など、今後もさまざまなバリエーションの器を展開してまいります。

「こんな漆器が欲しい」というオーダーも歓迎いたします。ノウハウと技術を生かし、独自のアレンジでお客さまのリクエストにお応えしますので、お気軽にご相談ください。

有限会社 中出漆器店

普段づかいしたくなる「色気」のある器を追求しています。四季や生活のリズムに合わせて、いつでも新しさが感じられる“Something New”の商品づくりにこだわっています。

オーダーメイド可

職人手作り

電話対応可

〒 922-0274
石川県加賀市別所町漆器団地9の1

0761-77-2036

u-nakade@p2272.nsk.ne.jp

http://yumekoubou-nakade.com

https://yumenakade.base.ec/

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