2021年9月22日

蒔絵の繊細なきらめきを身につける、うるしアートはりやのアクセサリー

「日本古来の漆芸・蒔絵を、もっと身近に感じてほしい」。そうした想いから、国内でいち早く蒔絵のアクセサリーを手掛けてきたうるしアートはりや。繊細なデザインのブローチやピアスなど、さりげなく身につけられるアイテムの数々は、思わず手に取ってみたくなるものばかりです。2021年4月には創業40周年を迎えた同社に、商品の魅力を伺いました。

伝統工芸士4人の手仕事から生み出される、個性豊かな作品たち

山中塗というと、茶道具やお椀などのイメージが強いですが、うるしアートはりやがアクセサリーに注力するようになったきっかけは何だったのでしょうか。

工房の職人のひとりである針谷絹代が、自分のアクセサリーに蒔絵を描いてみてはと考えたことが始まりです。針谷祐之・絹代の夫婦が1981年に工房を立ち上げた当初は、棗(なつめ)などの茶道具を専門にしていましたが、時代のニーズの変化に伴って、アクセサリーを含むさまざまなものに蒔絵をほどこすように。90年頃には、工房として展示会に出展したり、駅のコンコースに店舗を出したりと、お客さまと直接やり取りする機会も作っていきました。そうした中で、特に好評だった商品がアクセサリーだったんです。当時は、アクセサリーに蒔絵を描くという発想自体が目新しかったのだと思います。

特に人気があるアイテムはありますか。

ブローチはロングセラー商品になっていますね。手ごろな価格帯ながら、さりげない上質感を演出できるアクセサリーとして支持いただいています。ペンダントにもできる2wayのアイテムで、その日の気分やお洋服に合わせて使い分けられるのも特長です。

現在は絹代さんだけでなく、長男の崇之さんや次男の祥吾さんも工房に加わって、アクセサリーを作られていますね。それぞれの作品に個性が出ていると感じます。

4人の職人は全員が伝統工芸士で、手作業による丁寧な仕事ができるのが当社の強みです。
アクセサリー製作のきっかけを作った絹代は、縁起物のフクロウや親しみやすい猫など、かわいらしい動物を好んで描いています。崇之はシックな幾何学模様が得意で、モダンな印象の作品が多いです。祥吾はバードウォッチングの趣味を活かして、カワセミやヤマセミなどの野鳥のモチーフを十八番に。祐之はあまりアクセサリーを製作していませんが、古典柄が得意で、最近では江戸時代の絵師・伊藤若冲の模写なども行っています。
デザインのバリエーションが豊富なので、気に入っていただける商品がきっと見つかるはずです。

蝶貝、琥珀、べっ甲――新たな素材との出会いが蒔絵の魅力を引き出す

蒔絵アクセサリーを製作する工房の中でも、うるしアートはりやは白蝶貝・黒蝶貝や琥珀、べっ甲など、幅広い素材に蒔絵を描いているのが特徴的です。

好奇心を持って、少しでも「きれいだな」「おもしろそうだな」と感じる素材を見つけたら、積極的に蒔絵アクセサリーの土台として試しています。蒔絵に特化した職人集団だからこそ、さまざまな素材のポテンシャルを開拓できると感じていますね。

それぞれの素材の魅力を教えてください。

蝶貝は蒔絵の中でも螺鈿(らでん)という技法で使う素材ですが、それを土台に蒔絵をしてアクセサリーを製作しています。蝶貝特有のきらめきと、蒔絵による金属の表現の調和が絶妙で、同じ蝶貝を由来とする真珠のジュエリーとの相性も抜群です。
琥珀のアクセサリーの魅力は、なんといっても太古のロマンを感じさせること。中には虫入りの琥珀を使った蒔絵アクセサリーもあります。また、透き通った素材に蒔絵を描いている比較的珍しい商品でもあります。
べっ甲のアクセサリーは、素材の美しい模様を活かした蒔絵が醍醐味です。また、シワやワレのある素材を蒔絵でカバーして商品化するケースが多いため、貴重な材料を活かす意義もあります。
新しい趣向の商品が次々と登場しているので、お客さまには常に新鮮さを感じていただけると思います。

男性が楽しめるボタンダウンピアス、カジュアルなブランド「Bisai」も注目

近年では、自社ブランドによる商品ラインナップがさらに広がっていますね。2010年にはメンズアクセサリーブランド「Mt.Artigiano」(モンテ・アルティジャーノ)が誕生しています。

「Mt.Artigiano」では、ネクタイピンやカフスボタンなどを展開しています。アクセサリーというと真っ先に思い浮かぶのは女性向けのアイテムかと思いますが、お客さまから「夫婦で蒔絵アクセサリーを身につけられたら」とご要望をいただき、新ブランド立ち上げにつながりました。

同ブランドのラインナップでは、石川県から「プレミアム石川ブランド製品」に認定されたボタンダウンピアスがユニークです。

ボタンダウンピアスは、クールビズに彩りを添える新アイテムです。ボタンダウンシャツの襟ボタンの上から重ねて留められるという、ピンブローチのような仕組みになっていて、クリーニングや洗濯の際には取り外しできるようになっています。

続いて発表された「Bisai」は、若い方々がよりカジュアルに蒔絵アクセサリーを楽しめるブランドになっていますね。

こちらもお客さまの声がきっかけになったブランドで、ボタンダウンピアスをご覧になった方から「ピアスにできませんか?」とリクエストいただいたことから生まれました。特に若い方から人気を集めているのが、てんとう虫をかたどった「Nanahoshi」シリーズ。ポップなかわいらしさと、蒔絵の艶やかさや上品さを兼ね備えたデザインを気に入っていただける方は多いですね。価格も1万円台からと、蒔絵アクセサリーが初めてという方でも手に取っていただきやすくなっています。

一方、18金をフレームに用いたペンダントなど、本格的なジュエリーラインも登場しています。

蒔絵アクセサリーのパイオニアとして次のステップに進むべく、本物のジュエリーを作りたいと考えていたんです。このペンダントは、当社で蝶貝に蒔絵をほどこしたのち、山梨県にあるジュエリー工場の彫金師の方にフレームを作ってもらって製作。さまざまな装いに合わせやすい小ぶりのデザインで、30~40代の若い方からご年配の方まで、幅広くご愛用いただいています。数多くは作れませんし、価格も上がってしまいますが、それでも、長く大切に身につけていただける本当によいものをご提供できていると思っています。

進化を続ける山中塗の魅力を、蒔絵アクセサリーで体感して

工房設立から40年にわたり、新たな試みを続けてきたうるしアートはりやが、今後チャレンジしていきたいことはありますか。

これからも、新たなアイテムや素材への挑戦を続けていきたいと思います。その一環として、直近では、同じ石川県にあるハンドメイドの腕時計メーカー・C-Brainとのコラボレーションが実現し、蒔絵の腕時計の取り扱いを始めました。県内における高い技術同士のコラボレーションで、かつ珍しい取り組みということもあり、注目度は非常に高いです。
さらに、海外にも積極的に展開していきたいですね。すでにドイツやフランスの展示会に複数回出展し、手ごたえを感じているところです。蒔絵アクセサリー工房として、国内で一定の地位を築くことができた今、山中が誇る蒔絵の魅力を世界に発信していければと考えています。

最後に、デジタル展示会を訪問された皆さんにメッセージをお願いします。

当社の商品を通じて、無限に広がる山中塗の可能性を感じていただきたいと思っています。山中には多様な技術が集まっており、扱う素材も、木や漆からプラスチック、シルクスクリーンに至るまでさまざまです。新奇な試みが多いため、山中塗は“安物”“偽物”といった見方をされることも少なくありません。しかし、これらの試みは、山中塗をより使いやすく、魅力的な漆器として洗練させるために、先人たちが技術を磨き、試行錯誤を繰り返してきた山中の歴史の産物であると、私たちは考えています。当社の蒔絵アクセサリーも、この歴史の延長線上にあるのです。こうした漆器産地・山中の文化を体感いただけるよう、当社工房では年に一度、普段は見られない蒔絵の作業場を見学できる「工房祭」を開催しています。工房祭の期間外でも、ギャラリーでじっくりと作品をご覧いただけますので、山中温泉にお越しの際には、ぜひお立ち寄りいただけますと幸いです。そして、山中塗の魅力を知っていただく第一歩として、うるしアートはりやの蒔絵アクセサリーを手に取っていただければ、大変うれしく思います。

うるしアートはりや

「 漆を毎日の生活の中に多く取り入れていけるように 」
うるしアートはりやは1981年に茶道具の蒔絵師、針谷祐之・絹代が設立した蒔絵工房です。 現在は息子の針谷崇之・祥吾も加わり、親子4人で蒔絵作品を製作しております。 日本独自の蒔絵を身近に感じて欲しいという思いから蒔絵のアクセサリー製作や新しい素材への蒔絵など様々な取り組みをしております。

オーダーメイド可

職人手作り

電話対応可

ページの先頭へ